
願わくば、いつまでもこのままで
第9章 とまれない、とまらない
首を傾げるところを見ると
とても人妻だとは思えなかった。
「……どうしたの?
なんで、こんなとこに?」
会いたい人に会えた嬉しさは一瞬口角をあげたものの、すぐに驚きと疑問に呑まれた。
「それは……もちろん、陽君に会いにきたのよ」
「ふーん」と、俺は柄にもなくあからさまに目の前の人を疑ってみせる。
だって、そうだろ
俺に会いに?何のために?
わざわざ自分から
まるで赤ずきんが狼がいると分かったうえで家に来たようなものだ
比奈ちゃんは
俺の気持ちに気づいてるんじゃないのか
狼は赤ずきんの横を通り過ぎ
家のドアを開け、彼女を見た。
「とりあえず、入る?
立ち話で済むならそれでいいけど」
「それなら…お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます」
比奈ちゃんの雰囲気はいつもより固くて、何かに緊張しているようにも見えた。
一体ぜんたい
この人は何をしに来たんだ?
