
願わくば、いつまでもこのままで
第9章 とまれない、とまらない
「どうぞ」
小さなテーブルの上に湯のみが2つ
コトリと置かれる。
正座で俯き何を考えているのやら
強張る身体の正面に腰を降ろしたものの
俺はあさっての方向に足を投げ出した。
時折ちらりと目を向ける。
すると
タイミング良いのか悪いのか
ばっちり合った目と目をお互い逸らす。
そんな事を何度か繰り返す。
……何だこれ、おかしいだろ……
つい口元を掌で覆う。
こそばゆいような
むず痒いような
そんな気持ちを抑えるように
「陽君」
顔を上げる。
緊張した声で強張った体で
何故だか必死なような表情の彼女が俺を見ている。
無意識に
静かに
小さく
俺は、深呼吸をした。
そして
次の言葉を待つ。
「陽君はさ……」
スー ハー ……
酸素を取り込み二酸化炭素を出す。
自分の呼吸の音が
少し大きく聞こえた。
「陽君は……最近、元気?
しばらく家に来なかったから
少し心配してたよ」
「……へ?」
間抜けな声が漏れる。
どういうことかと思ったけれど
どうやら比奈ちゃんは予想以上に何かに緊張?しているようだ
雰囲気を和らげるためにも
話しかけるためにも
自分の心のためにも
最初はと
なんでもないことを言ったのだろう
でも比奈ちゃんは寧ろ強張っていく一方で、汗でも流れるんじゃないかと
それほどの表情をしていた
