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願わくば、いつまでもこのままで

第2章 はじまり

それから滞りなく結婚式は終わり
続けた披露宴もケーキ入刀やその他いろんなイベントが終わり、写真撮影などそれぞれの自由な時間になった。



俺は知り合いがいるわけでもなく、独りで隅のテーブルに座っていた。


すると、こっちに向かって誰かが走ってきた。

それは白いタキシードを着た兄貴だった。

俺は立ち上がって挨拶をした。

「よっ、兄貴」

「よっ、じゃないだろ!お前何であそこに挨拶に来ないんだよ」


あそこ、とは兄貴が言いながら指差した1番前の花嫁花婿の席のことだった。


「いや、なんか人多くって……」

「当たり前だ!ほら、行くぞ」

そう言って兄貴は俺の腕を掴んで無理矢理歩かせた。

「えっいや、いいよ俺はさ」

「いいわけあるか!お前は俺に自分の唯一の家族を紹介させてくれないのかよ」

唯一の家族、その言葉が俺には嬉しくて
兄貴は恥ずかしかったのか、前を向いていて顔が見えなくても照れてるのがわかった。



花嫁花婿の席には当然兄貴と結婚した花嫁が座りながら誰かと喋っていた。

「おい、比奈」

兄貴が呼ぶと花嫁はお喋りをやめて立ち上がり、こっちを見た。

あ……可愛い……

童顔で茶髪の少しカールしたポニーテールが似合っている可愛い人だった。


「……この子が、陽君?」

「そ、俺の弟でたった1人の家族だ」

花嫁は俺を見てニコッと笑った。

「はじめまして!陽君。今日、泉になった泉比奈です。よろしくね」

「あ、こちらこそ。泉陽です……よろしく」


俺はその泉比奈さんに見惚れてちゃんと声がでなかった。



一目惚れだった。
感じた、俺はこの人が好きだと。

今まで何度も兄貴と同じ人を好きになったけど
この人だけは譲りたくないと思った。

でも初めて会ったのは披露宴会場。
兄貴の嫁だ。


……なんで、兄貴より先に出会えなかったんだろう


俺は今この瞬間

出会ったばかりのこの時








君に出会ったことを呪おう




これが、比奈ちゃんと俺の出会いだった。

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