
願わくば、いつまでもこのままで
第8章 変化
1階に降り
エントランスをぬけて外へ出る。
夜道で独り待っていようと思った矢先、このマンションの前の道路に男女の姿を見つけ歩みを止めた。
やだ、先客?どうしよう、タクシー来るのに……
いちゃつくカップルの邪魔をしてタクシーから降りた潰れた和君を運ぶ……シラけちゃうわ
想像して頭を横に振る。
道路の男女は私に気づいていないよう
取り敢えず私はマンションの玄関前まで戻り、様子を見ていた。
見ていたといっても、街灯少なく月も雲で隠れているためほとんど姿は見えていない。
早く帰ってくれないかな……いいところで邪魔したくもないし
そう思いながら、ぼーっとしていた。
蝉の声を聴きながら。
「はっ、はああぁぁぁっ!!?」
ビクッッ
突然の大声にぼーっとしていた目が覚め体がはねた。
声の方向を見ると
道路のカップルがいて
うっすら見える2人の姿は少し口論している……というか、男性が怒っていた。
夜中になんて大声を出すんだろう…
…近所迷惑な
「て…………まできいた……だよ!!」
「え………」
「…………!!」
それから途切れ途切れにきこえてきた声は、私にある人物を連想させた。
「…………陽君?」
確かにそれは陽君の声。
でもこんなところで女の人と何をやっているの?
女の人って、園田さん……とか?
気になって私は彼らに近づいた。
距離が縮まっていくと2人の姿がはっきり見えて、女性は私の知らない人だと分かり、会話がはっきりときこえてきた。
「……俺はもう帰る。じゃあな」
陽君は背を向けその場を立ち去ろうとする。
私の口から「待って!陽君!」と出かかったところで
傍にいた女性が陽君を引っ張り、
陽君はびっくりしてバランスを崩し
2人の唇が重なる
私は彼らが気づかぬまま
その一部始終を見てしまった。
ああ、また鉢合わせしてしまったのか
と、私は思う。
