テキストサイズ

月夜に咲く

第3章 水無月 龍

水無月 龍


彼の家は裕福だ。
何不自由なく暮らしていた。

だか親は金を渡すだけ渡し、
龍には全く関心しなかった。


小学生の頃、
「ママッ!
 見てッ!僕今日のテスト100点だったの」

龍は絶対に喜んでくれる、
抱きしめて、頭を撫でてくれる、
そう思ってた。

「それぐらい当たり前よ
 お兄ちゃんなんて毎回とってきてるわよ」

その時の龍はまだ幼いながらにも
お兄ちゃんみたいに頑張れば、
きっと笑ってくれる、
抱きしめてくれるんだっ!
そう思い込んでいた。


頑張って、頑張って、
遊びに行くのも我慢して
好きなテレビも我慢した、
なのに、それなのに、

どうしてママはこっちを見てくれないの?
どうしてパパはこっちを見てくれないの?
僕って何?

お兄ちゃんには笑うのに、
僕には笑ってくれないの?

何で?
何でっ!


龍の心の中で何かが音をたてて崩れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ