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性教育学校

第36章 家族




『はい、榎本ですけど』




………ドクッ

お母さんの声だった
すごく懐かしい



『……もしもし?』


なにか話さないと…っ


「……お母さん…?」

自分の声が
すごく震えた


『みなみ…?』


お母さんの声も
細くて震えてたよ


「うん…久しぶり…」


怖い…
いきなり電話を
切られるかもしれない

ひどいこと
言われるかもしれない…

お母さんが無言になるたび
すごくすごく怖い



『…みなみ……元気かい?』

「元気だよ…」

『そっか…』


あたしから電話したのに
なにも言葉が出てこない…
聞きたいことなんて
山ほどあるけど
聞けるわけない。


言葉がなにもでないで
沈黙が続く





『ごめんね……みなみ…』

沈黙も破ったのは
お母さんの泣いている声


『ほんとに…ごめんなさい……っ』

思ってもなかった
言葉に混乱で動揺してしまう



「……っなに謝ってんのよ」

怒りたくなんかない
ただ、ちゃんと向き合いたかっただけなのに
自分が止められない


「どうして…………
どうして…、あたしを売ったの!?」


こんなこと
聞きたくなかった

わかってる。
わかってるんだけど…
言葉が先に出てしまう

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