夢のうた~花のように風のように生きて~
第2章 悲劇の始まり
「―」
あまりにも酷い言葉に、お千香は唇を噛みしめた。
「そんな辛い想いをする必要なんぞないじゃねえか。ここにいれば、お前はこれまでどおり何不自由のない暮らしもできる。私がお前を守ってやれる」
あなたになんか守って欲しくはないのだ、一刻も早く、自由の身になりたいのだと叫びたかった。
「私は、私は―」
お千香は夢中で言おうとした。
「自分の身くらいは自分で守れます。誰に守って貰おうなんて考えてもいません。仕事だって、ちゃんと自分で探せるし、一人で生きていって見せます」
「駄目だと言ったら、駄目だ。それとも、お前は私を本気で怒らせたいのか」
定市の声には憤りが滲んでいる。心から怒っているのが判った。
「何故、判らねえんだ」
定市がお千香の腕を掴んだ。
「人が大人しく下手に出てりゃあ、良い気になりやがって」
口汚く罵りながら、お千香の手を強く引く。あまりの強さに、お千香は悲鳴を上げた。
「痛い―」
が、定市は痛みに顔をしかめるお千香には頓着せず、お千香を引きずるようにして次のの間に連れ込んだ。そこは居間とは続きになった定市の寝室である。
「もう二度と出ていくなぞと言わせなくしてやる」
烈しい力で突き飛ばされ、お千香は後方へ投げ出された。その拍子に腰をしたたか打ちつけてしまったらしく、鈍い痛みを腰に感じた。
「痛―」
とうとう、こらえていた涙が溢れた。
無意識の中に腰をさすっていると、定市が間近に来ていた。
「どうした、痛むのか」
自分が手荒な扱いをしたくせに、猫なで声で聞いてくるのも余計に嫌だ。
「どれ、撫でてやろう」
そう言って、ふいに腰から尻を撫で回され、そのおぞましい感触にお千香は叫んだ。
「止めて、私に触らないで」
お千香はありったけの力を込めて定市の身体を押した。華奢な外見には似合わぬ力だった。
あまりにも酷い言葉に、お千香は唇を噛みしめた。
「そんな辛い想いをする必要なんぞないじゃねえか。ここにいれば、お前はこれまでどおり何不自由のない暮らしもできる。私がお前を守ってやれる」
あなたになんか守って欲しくはないのだ、一刻も早く、自由の身になりたいのだと叫びたかった。
「私は、私は―」
お千香は夢中で言おうとした。
「自分の身くらいは自分で守れます。誰に守って貰おうなんて考えてもいません。仕事だって、ちゃんと自分で探せるし、一人で生きていって見せます」
「駄目だと言ったら、駄目だ。それとも、お前は私を本気で怒らせたいのか」
定市の声には憤りが滲んでいる。心から怒っているのが判った。
「何故、判らねえんだ」
定市がお千香の腕を掴んだ。
「人が大人しく下手に出てりゃあ、良い気になりやがって」
口汚く罵りながら、お千香の手を強く引く。あまりの強さに、お千香は悲鳴を上げた。
「痛い―」
が、定市は痛みに顔をしかめるお千香には頓着せず、お千香を引きずるようにして次のの間に連れ込んだ。そこは居間とは続きになった定市の寝室である。
「もう二度と出ていくなぞと言わせなくしてやる」
烈しい力で突き飛ばされ、お千香は後方へ投げ出された。その拍子に腰をしたたか打ちつけてしまったらしく、鈍い痛みを腰に感じた。
「痛―」
とうとう、こらえていた涙が溢れた。
無意識の中に腰をさすっていると、定市が間近に来ていた。
「どうした、痛むのか」
自分が手荒な扱いをしたくせに、猫なで声で聞いてくるのも余計に嫌だ。
「どれ、撫でてやろう」
そう言って、ふいに腰から尻を撫で回され、そのおぞましい感触にお千香は叫んだ。
「止めて、私に触らないで」
お千香はありったけの力を込めて定市の身体を押した。華奢な外見には似合わぬ力だった。