夢のうた~花のように風のように生きて~
第1章 始まり
お千香が己れの身体の秘密を知ったのは十二を過ぎた頃のことだ。その歳になれば、誰もが思春期を迎え、男女はその各々の身体の特徴をおぼろげながらに意識するようになる。
お千香は、自分がまさか、幼い頃から夢見ていたような幸せな結婚を生涯望めぬとは、その歳になるまで一度たりとも考えたことがなかった。その秘密を知った時、お千香は愕然とした。いつか大きくなったら、乳母が子守唄で聞かせてくれたように、心から好きになった男性(ひと)とめぐり逢い、恋をしたいと幼い頃から夢見ていた―、その夢が無惨にうたかたのように消えた瞬間だった。
お千香は、自分がまさか、幼い頃から夢見ていたような幸せな結婚を生涯望めぬとは、その歳になるまで一度たりとも考えたことがなかった。その秘密を知った時、お千香は愕然とした。いつか大きくなったら、乳母が子守唄で聞かせてくれたように、心から好きになった男性(ひと)とめぐり逢い、恋をしたいと幼い頃から夢見ていた―、その夢が無惨にうたかたのように消えた瞬間だった。