夢のうた~花のように風のように生きて~
第2章 悲劇の始まり
暗く燃えさかる情熱とでも言ったら良いのだろうか。あたかも蛇が捕らえようとする獲物を遠巻きにじっと眺めているような、執念深く陰湿な視線だ。
お可哀想に、あれほど美しくお生まれになったことがお嬢さまに災いをもたらそうとしている―。おみつは、どんなことをしてでも、お千香を定市の魔の手から守ると誓った。もし仮にお千香当人が定市に惚れており、心から望んでいるというのであれば、若い二人が名実共に夫婦になることも祝福できた。それがたとえ先代の遺言に背くことだとしてもだ。おみつが考えるのは、まずお千香の幸せであった。
「おみつ、私は旦那さまが怖い」
あの冷たい眼を思い出すだけで、ゾッとする。嫌らしげな笑いを浮かべて、お千香の身体に触れようとするのも気味が悪い。
不安げに訴えるお千香に、おみつは安心させるように明るい口調で言った。
「ご心配には及びません。今夜から、また私が今までのようにお隣で不寝番を勤めますゆえ」
おみつは、にっこりと笑った。
その言葉どおり、その夜から、おみつが再び隣の部屋で寝むようになり、そのことがお千香にとって、いかほど心強いことかは計り知れなかった。
お可哀想に、あれほど美しくお生まれになったことがお嬢さまに災いをもたらそうとしている―。おみつは、どんなことをしてでも、お千香を定市の魔の手から守ると誓った。もし仮にお千香当人が定市に惚れており、心から望んでいるというのであれば、若い二人が名実共に夫婦になることも祝福できた。それがたとえ先代の遺言に背くことだとしてもだ。おみつが考えるのは、まずお千香の幸せであった。
「おみつ、私は旦那さまが怖い」
あの冷たい眼を思い出すだけで、ゾッとする。嫌らしげな笑いを浮かべて、お千香の身体に触れようとするのも気味が悪い。
不安げに訴えるお千香に、おみつは安心させるように明るい口調で言った。
「ご心配には及びません。今夜から、また私が今までのようにお隣で不寝番を勤めますゆえ」
おみつは、にっこりと笑った。
その言葉どおり、その夜から、おみつが再び隣の部屋で寝むようになり、そのことがお千香にとって、いかほど心強いことかは計り知れなかった。