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夢のうた~花のように風のように生きて~

第4章 運命の邂逅

「徳松さん、私は、あの人の言ったとおりの女なの。あの人にさんざん―」
 涙ながらに言うと、ふわりと抱き寄せられた。次の瞬間、お千香は徳松の広い胸にすっぽりと包み込まれていた。
「良いんだ、それ以上言わなくて良い。たとえ、お前があいつに何をされていようと、過去に何があろうと、お前はお前じゃねえか。お千香ちゃん、俺は今の、そのままのお千香ちゃんに惚れたんだ。何も気にするこたァねえさ。昔のことなんぞ、俺にはどうでも良い」
 お千香は徳松の腕の中で思い切り泣いた。
 そんなお千香を徳松は子どもを見守るように優しくあやす。
 お千香は存分に泣きたいだけ泣いた後、徳松に初めて自分の素性について語った。
 呉服太物問屋美濃屋の一人娘として生まれたこと、父の定めた定市という良人がいること、父の遺言で定市とは形だけの夫婦であったはずなのに、定市がお千香を手込めにしてしまったこと。
 最後に、お千香が自分の身体の秘密を打ち明けようとすると、徳松は人差し指でお千香の唇を押さえた。

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