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短編集

第14章 『越冬ツバメ』

私とやよいさんは全く関係ない間柄だった。


親子か、孫とは言わないものの、かなり年が離れている。


共通点と言えば、お互いに一人だった、ということかもしれない。



私は、いろんな嫌なことが起こって、居場所も目標も失って、ふらふらとさまよっていた。

嫌なこと、といっても世間には山ほど溢れた、ありふれたことで、どれだけ話したところで、何にもならない。

それはあまりにありふれた話なので、誰しもある一定の共感を示してくれるけれど、それ以上、誰も興味を示さないし、助けてはくれない。

ただ私にとっては一大事で、悲しくて辛くて、どうしようもなく、私の手に余る出来事だったのだ。

―あのときの私にはどうしようもなかった。

今は冷静にそう思う。



あの時、私は何を見るべくもなく、この町を訪れ、商店街の片隅で、さくらクリーニングの軒下に立って、つばめの巣を眺めていたのだった。

親鳥はせっせと青虫や昆虫を幼鳥に与えていた。

私はただ、それの生にあてられて、ぼうっと見ており、後ろから声を掛けられていることに、気付かずにいたのだった。

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