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短編集

第14章 『越冬ツバメ』

「…んた、あんた、ちょっと」

私が声に気付いて振り替えると、クリーニング店のカウンターに顎ひじを付いた小柄な老婆が私を見ていた。

銀縁の眼鏡をかけているが、老眼鏡なのか、顎を引いてレンズを通さず、上目に私を覗き込む。

「ふ~ん」

溜め息なのか、何か納得したのか、よくわからない。

じっと見られて、少しどぎまぎする。


「あんた、ずいぶん汚れてるね。」


そう言われて、私は慌てて自分の身なりを確かめる。

カジュアルな服装で、高価なものでなく、地味だが、洗濯はしてあった。


私は特別に服が汚れていなかったので、老婆の言った意味を計りかね、再び老婆の顔を見た。

きょとんとした私を見て老婆は人を喰ったように笑った。


老婆「クリーニング、していきなよ」


私「えっ?」


老婆が口端を拡げて微笑んだ。

ピチャッ。

私の頭につばめの糞が落ちた。

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