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短編集

第5章 イブと自販機と男

『大当たりです!おめでとう!』

自販機が少し興奮した音声で讃える。

「…ありがとう」

『さあ、当たりがでたらもう1本。ラッキーですね。どうぞ、お好きな商品を選んでください』

「ああ。…嬉しいよ。でも、これは君の仕業かい?」

『いいえ、私にはそんな力はありません。これはあなたの力です。私の仕事は、先程お話ししたとおり、見守るだけです。ただ、今のお気持ちを忘れずに…。』
自販機の言葉を聞いて、何故か、男の目から涙がこぼれた。

『……さあ、どうぞ。』

遠慮がちに言う自販機に促されて男は、当たり分のボタンを押す。

ガチャン。

商品が取り出し口に落ちる。


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