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短編集

第5章 イブと自販機と男

男は取出し口から2本の缶を取り出すと1本を自販機に差し出した。

当たり分の、ホットのミルクティー。

「ありがとう。俺は、もう大丈夫だ。これはお礼だ、受け取ってくれるかい?」

『よかったですね。ありがとうございます。でも、それはお気持ちだけ頂きます。ミルクティー、渡す相手がお待ちですよ?』

「…なんでもお見通しなんだな。全く、まいったよ。なんて自販機だ。時代は進んだもんだよ…」

男は微笑んで、そう言った。

『ご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。』

「ああ、今度もきっと大当たりだ。」

自販機の明かりが優しく強弱する。
きっと、自販機は微笑んで見送ってくれているのだろう。
『…良いクリスマスを』

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