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短編集

第7章 『飛行願望』

「ああ、まあ死んでも良かったんだ…」

少女は少年の顔をしげしげと見つめる。

抱かれているので、距離が近い。

「ふ~ん…まあいいわ」

少女は少年を抱いたまま、街の中を飛びはじめた。

「遊ぼうよ、しばらくしたら飛行力も回復するでしょ?」

「まあ…たぶん」

まだ頭は朦朧としていたが、先ほどまでと比べれば大分回復してきたようだった。

だがまだ一人で飛行できるほどではない。

「仲間が集まってるのよ。みんなで飛ぼうって」

そういいながら少女は旧市街の方へ飛んでいく。

ほかの人間と飛行するのは初めてだ。

しかし、女の子に抱えられて初対面の人たちに会うのは、恥ずかしい気がした。
「も、もう自力で飛べるよ」

「そう?」

少女はこっちの気持ちなんてまるで気にしていない。
ただ空中で止まるとゆっくり、腕をはなした。

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