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短編集

第10章 『祖母の夏』

初夏。
田んぼが青い。
風が吹いて、まだ幼い稲穂が揺れる。
白い雲が浮いている。

土手を駆けていく子供たち。
学校からの帰り道。
彼女は舗装もない曲がりくねった道を一人歩いていた。
今日も学校でいじめられた。
村の子達は、運動が得意だ。
男の子達は野原を駆け回っていたし、女の子もゴムとびやら何でも上手にこなす。

だが彼女はそうはいかなかった。

どんくさい子。

学校でみんなにいわれた。
みんなと並んで雑巾がけも上手にできない。


家に帰っても、おじさんやおばさんやいとこ達に同じことを言われるだろう。

慣れていないだけなのはわかっているはずなのに。

家のルールなんてそれぞれの家で違うに決まっているのに。

そんなことを全て理解して器用に合わせて生活していくなんて、彼女にはまだ難しいことだったのだ。

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