359°
第6章 熱意と決意
オレが指を差すと、蒼士は作業をやめて、中途半端だったギターケースのチャックを下に降ろした。
中からワインレッドの色をしたギターを取り出す。
「これは、ギブソンのレスポール…」
そう言うと、蒼士の表情がふっと柔らかくなった。
「…叔父さんの形見だ」
そして優しい瞳でそれを見つめる蒼士。
「…形見…?」
「ああ、僕にギターを教えてくれたのは叔父さんなんだ」
そう言って蒼士はギターをジッと見つめた後、ピックで弦を優しく弾いた。
奏でる音も、不思議と優しい音色に聞こえてくる。
「…」
いつも上から目線で人を寄せ付けないオーラを纏ってる蒼士、
そんな優しい表情をするなんて…
オレは初めて本当の蒼士の姿を、垣間見たような気がした。