359°
第6章 熱意と決意
ふわっといい香りがした。
「良かったぁ、も~間に合わないかと思ったじゃない」
そう言ったのは、キミイさんだった。
キミイさんはオレの腕を引っ張り、最前列に並ぶ。
いつの間にか演奏は終わっていて、キャーキャー声を出していた女の子たちも大人しくなっていた。
ステージの照明はフッと暗くなり、人影が移動してるのが見える。
「次だからね」
キミイさんがニコッと笑った。
手にはいつの間にかビデオカメラを持っていた。
オレはギリギリ間に合ったことにホッとし、ステージを見上げた。
胸が高鳴る。
「なんか緊張してきました…」
自分が歌うわけでもないのに、鼓動が早くなった。