359°
第6章 熱意と決意
その時ステージの上で、軽くドラムを叩く音が響いた。
ステージの照明はうっすらと付いており、菅生さんたちがチューニングをしているのが見える。
だけど、順平の姿だけどこにも見当たらない。
「順平?あいつどこに…」
ステージの袖にでもいるのか?
そう思った矢先、後ろからポンと肩を叩かれた。
「順平!?」
振り返るとそこにはなぜか、マジックで書きましたみたいな×印のついたマスクをかけた順平が、真顔で立っていた。
「お、おまっ…こんな所で何やってんだよ!?」
眼球が飛び出るほど驚きながらそう言うと、順平はマスクを下にずらした。
「わり、卓也。オレ風邪ひいちゃって歌えねーんだわ。だから、代わりに歌ってくんね?」
そう言いながら、可愛らしく首を傾げる順平。
「……はああああああ!?」
オレの素っ頓狂な声が辺りに響いた。