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メガネは外さないで

第3章 5月 GW①

「さっき、本屋にいた方ですよね?」


青年が佳菜子に話しかけてきた。


「はい。大きな声出したりしてすみません。」


「いえ、俺のせいで参考書買えなかったんじゃないですか?」


「え?」


「だって参考書ずっと探していたでしょ?」


青年は本当に申し訳なさそうな顔をしていたので、考え事をしていただけだとは言えない雰囲気になってしまった。


「でもいいんです。また今度買いますから。」


「でもあの参考書、もう売り切れでしたよ。」


「えっ…そうなんですか…」


「あの、よかったら今度一緒に買いに行きませんか?俺、あの参考書売ってるもっと大きな書店知っているんです。」


佳菜子は断ろうと思ったが、あのとろけそうな笑顔を思いだし、もう一度あの顔が見たいと思った。


「じゃあ、…よろしくお願いします。」







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