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メガネは外さないで

第1章 4月上旬

佳菜子は凄く嫌だったが、断れない性格と、さすがに怪我が痛かったので、大人しく治療してもらうことにした。


「あ、あの。」


「はい?」


「先生、ですか?」


「はい。今月から2年生の数学の担当で、永山大輔といいます。」


「あ、…そうなんですね。」



「えーっと…」



眼鏡男が胸元の名札を見ようとぐぐっと近づいてきたので、佳菜子は近づいた分、離れた。



「山本…佳菜子です。2年生です。」


「2年生でしたか!! これからよろしくお願いいたします!!」




永山はとても喜んだ様子で握手を求めてきたが、佳菜子は一瞬躊躇した。


しかし意外なことに、とても綺麗な指をしていた。


恐る恐る握手をすると、ガバッと両手でつかまれ、ブンブンと上下に大きく振り回された。


もはや握手ではない。






やっぱりこの先生、変!!





「あ、ありがとうございました!!
教室行きます!!」


いてもたってもいられなくなった佳菜子は、お礼もそこそこに、あわてて保健室を飛び出した。








佳菜子が廊下を走る靴音が聞こえる







永山の分厚い眼鏡のその奥で、熱い何かが揺らいでいたことに、佳菜子は気がつかなかった。




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