テキストサイズ

メガネは外さないで

第1章 4月上旬

コンコン。

「失礼しまーす。」


学校についた二人は、佳菜子の怪我の治療のため、保健室に立ち寄った。

だが、保健の先生はいなかった。



「あれ?先生いないね。」


「あ、ほんとだ。
私先生に治療してもらってから教室行くから、みっちゃん先に教室行ってて?」


「一緒に待つよ?」


「始業時間過ぎたら困るから。」


「ん~、じゃあ先に行って、担任に話しておくよ。」


「助かる♪ よろしくね。」


「ハイハイ♪」




三久が保健室を出ていったと同時に、カタンと音がした。

それはカーテンが閉まっているベッドの辺りから聞こえた。


二人の話し声で起こしてしまってたんだと思い、申し訳なく感じていると、カーテンがシャッとあき、中から人が出てきた。






「あ、生徒さんですね?どうかしましたか?」







佳菜子は基本的に優しい。

たとえホームレスのような格好をした人に対してだって、偏見を持ったりしない。

だが



だが





これはひどい





白衣を着ているのだから、多分新任の先生であろう。

しかし、何故こうにも髪の毛がグシャグシャなのだろうか。

まるで人工的に作られた鳥の巣でもあるかのようだ。



また新任(予想)のはずなのに、白衣が黄ばんでいる。

もはや白衣なのかそうではないのか、見きわめすら難しい。





極めつけは超がつくほどの厚底眼鏡。

レンズ越しでは瞳が確認出来ないほどの分厚さだ。

今時、漫画でも出てこないだろう。




普段のんびり屋の佳菜子が、ぐるぐると頭を張り巡らしていると、厚底眼鏡のその男は佳菜子の顔をのぞきこんだ。


「どうかしましたか?」

「い、いえ!! あ、あの保健の先生は?」

「ちょっと電話が入り、職員室にいきました」

「あ、あ、そうですか!! じゃあまたあとで…」




そう言ったのが早かったか、眼鏡男が佳菜子の腕をつかんだのが早かったか。




手首をくるっと回転させられ、手のひらをみられた。


「怪我をしたんでしよ? 僕が治療しますよ。」


























(涙)









ストーリーメニュー

TOPTOPへ