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背徳の光景〜immorality〜

第1章 prologue

そこは薄暗く、外界からかけ離れた闇と称するに値する場所。

そこにいるのは二人の幼い少年、二人だった。


助けを呼ぼうにも、あまりとも隔てた壁と小さな窓は小さく。何よりも幼い二人の体力は消耗しきっていた。すでに声は掠れ、ヒューヒューと息が洩れるのみ。

年上らしき少年は切り傷や痣だらけで、服装はボロボロになり、その機能は皆無に等しい状態だった。


そんな彼にひっきりなしに声を掛ける、年端もいかない少年は涙で頬を濡らしていた。

「ねえ、大丈夫? ……僕たち、死んじゃうの?」

“死”というのがどんなものかなんて、幼い子供にわかる訳がない。

しかしこの二人の少年が体験した恐怖は、彼らに更なる絶望を与えた。


ほとんど全裸に近い年上の少年は、声も出すのも絶え絶えな中、見えない両親に必死に助けを求める幼い少年をほんの少しでも励まそうと、何とか声を発しようと重い口を動かす。しかし彼の口からこぼれるのはひゅーひゅーという虚しい呼吸音のみだ。

そんな自分の容態から思った以上の衰弱ぶりに、自分のおかれた立場に絶望する。


“生き地獄”……、まさにその言葉が相応しい。

それは残酷なお伽話。二人を誘った悪夢の出来事。



彼らが見た、背徳という名の光景。

あまりにも衝撃が大きかったその光景は、再び二人の少年を巡り合わせるものとなる。それはこの二人の複雑な運命へと導くプロローグだったのかもしれない。





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