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背徳の光景〜immorality〜

第2章 依頼【晃二視点】

『もし俺が死ぬことがあったら……、真相を突き止めてくれるか?』

中学時代からずっと腐れ縁だった、相庭 匡(あいば ただし)が死んだのは二週間前だった。





俺は大学を中退し、あり金はたいて事務所を設立した。
小さな小さな、俺だけの事務所。何時でも崩れそうな小さなマンションの一室に、それは構えてある。
開閉すればすぐにキィーッと耳障りな音がするドア。その横に俺の会社の看板がひっそりと掲げられていた。

白い看板には『濱田探偵事務所』と、シンプルな黒字で表記されている。

そう、文字通り、俺は探偵業を営んでいる。といっても仕事なんてたかが知れているが。
浮気調査、愛犬などのペット探しなど、微々たるものだ。
それでも仕事には変わりない。
どんなくだらない依頼でも、着実に仕事をこなし、信頼を得ること。それが今の俺に課せられた試練でもあった。







その突然の訃報を聞いたのは一本の電話だった。
相手は匡のたった一人の肉親である妹、真理ちゃんからだ。

『濱田さん……、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが死んだって……』

電話の向こうから流れてきた、真理ちゃんの声が今も耳についている。
鼻声で、それでも必死で俺に伝えようとする彼女の姿が、電話越しでも想像出来て、あまりの痛々しさにこっちまで胸が締め付けられた思いだった。


一体、匡に何があったというんだ。

しかも真理ちゃんの口から、想像もしてなかった言葉が出てきた。

『しかも焼身自殺だって……』

その衝撃に息を飲む。

まさか、まさかそんなことが……。
あの匡が? 自殺?
そんなこと信じられるか。


ふと一週間前の記憶が甦る。



『もし俺が死ぬことがあったら……、真相を突き止めてくれるか?』

匡が俺に投げ掛けた言葉。



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