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背徳の光景〜immorality〜

第2章 依頼【晃二視点】


 * * * * *


サラリーマンである匡から電話が掛かり、久し振りに会いたいと言われ、俺も別に用事がないと夜の七時に行きつけの居酒屋で待ち合わせして、共に酒を飲み明かした。
最初は他愛ない会話だった。段々とアルコールの力も入り、匡は途中から上司や同僚などの悪口にと発展し、俺は俺でうまく仕事に軌道が乗らないと愚痴を零し、お互いに無意味な慰めをしあっていた。

そのまま流れで何軒もはしごして、最後に落ち着いたのは小さなラーメン屋だった。
まだアルコールは抜けてはいなかったが、ピークは過ぎ、正常な意識を保てる程には回復していた。
お互いに脂っこい豚骨ラーメンを口に運び、やっとのことで一服した時だった。

「なあ、晃二(こうじ)……」

急に神妙な表情で、俺にと真顔になる。
その姿に俺は眉根を寄せながらも、聞く態勢に入る。

「頼みがある」
前置きする匡。
俺は普段と様子の違う匡に違和感を感じ、怪訝な表情で次の言葉を待つだけだ。
「もし俺が死ぬことがあったら……、真相を突き止めてくれるか?」
突然、予想もしてなかった台詞に、俺は言葉を失い、ただ匡を直視するだけだった。




周囲からは他の客たちの陽気な会話と、厨房でラーメンを作る音が混ざり合っていた……。







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