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……どうしてこうなった?

第29章 不協和音

「ご迷惑をお掛けしましたっ!」

橘は練習前に深々と頭を下げ、サッカー部メンバーに謝罪する。

「今日からシゴキだからな!」
「覚悟しろよ、橘っ!」

先輩らは笑いながら橘をからかう。

変に気を使わせないように配慮した先輩らの優しさが嬉しく、橘はしばらく顔を上げることが出来なかった。

涙を見せたらきっと、もっと、からかわれるから。

優花も目に涙をにじませてその光景を見守った。

槍倉駿二も、笑っていた。

恋敵が帰ってきたというのに嬉しそうに、笑っていた。

優花はそんな槍倉駿二の優しさに感謝していた。

でも、そんな優花も芹沢の表情は確認しなかった。

なるべく視界に入れたくなかったから。

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