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……どうしてこうなった?

第33章 動く歯車

「弱ってる? 私にはそうは見えませんけど?」

「そうだろうね」

「えっ……?」

予想外の副島の言葉に優花は肩すかしを喰らう。

「陸奥会長は気丈だ。悩みがあっても表に出したりはしない。でもね、優花さん。表に出ていないからって悩んでないわけじゃないんだよ、人間は」

少し悲しげな目をして副島は優花を見詰める。

「例えば葉月さん。あなたもそうだ。あなたも気丈だ。正直言ってあなたは落ち込んだり、苦しんだりしているように見えない。それが陸奥会長も怖かったし、悔しかったんだと、僕は思うよ、ここだけの話」

そう言って副島は困ったような笑みを浮かべた。

優花は初めて副島が人間的な感情のある表情をしたように見えた。

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