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……どうしてこうなった?

第37章 放たれた狂獣

「もちろんです。そうであってもらわなくてはなりません。あなたは佳奈美お嬢様のライバルとして頑張っていただきたい。なぜならそれこそが佳奈美お嬢様がより努力できることですから」

「より努力できる?」

「そう。佳奈美お嬢様は敵がいればそれだけ強くなれるお方です。いいなりになる方ばかりに囲まれていては伸びません」

「別に私は……陸奥先輩の当て馬じゃありません……ただあの人が許せないだけ」

陸奥の側近に感謝され、なんとも複雑な気持ちになる。

そのとき茅野は鋭い目付きを夕闇の茂みに向けた。

「どうしました?」

優花は驚いて尋ねる。

「いえ、何でもございません。さあ、早く帰りましょう」

茅野はすぐにいつも通りの無表情になり、優花の帰り道を急がせた。



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