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佳奈美は呆気にとられる。

が、すぐにキッと目尻を吊り上げた。

「お、お父様からそう言われたのねっ!!　駄目よ!!　私はもう二度と陸奥家とは関わらない!!　決めたの！」

「旦那様がそんな情けをかけると思いますか？」

茅野はじっと佳奈美を見詰める。

「ご安心下さい。私は今しがた陸奥家の執事を辞めてきました。私ももう、『陸奥家の人間』ではありませんので」

「え？　な、何言ってるの……」

「だから陸奥家を出ましたのでこれからも佳奈美さんのお側で働かせて下さい、と申しております」

茅野は至って落ち着いて、真面目にそう繰り返した。

「そ、そんなの……無理よっ……だってわたし、茅野に払うお給料も出せないし……」

ようやく状況を理解したが、あまりに突飛な話に戸惑ってしまう。