あいどる君に恋煩い
第7章 訪問客
私がようやく落ち着くとベンチに座らせ、小野龍は近くの自販機で飲み物を買って来てくれた。
「ん。俺の奢り。」
「あ、ありがとう……」
小野龍はそういいながら少し距離をおいて隣に腰掛けた。
渡してくれたのは冷たいお茶だった。
なんかお茶なところが小野龍っぽいなぁ
そんな風に思いながらもらったお茶を飲んだ。
「てかアンタさ、携帯みながら歩くのやめなよ。危ないから。俺がたまたま通りかかったからよかったけど、そうじゃなかったらどうなってたか……」
私の方は見ないで、隣からブツブツ聞こえてくる。
「え、あ、うん、ごめんなさい…… 本当に助けてくれてありがとう… あとさっき言ってた…」
実は私を助けてくれた時に言ってた言葉がひっかかってた。
「俺の…女ってセリフ………」
「っ‼‼‼ あ、あの時は、あ、あれくらいしか、い、言うことないだろ… べ、別に深い意味はないから」
普段あんまり慌てたりしないタイプだから私は正直おかしくて笑ってしまった。
「ぷっ」
「ちょっ、吹くなよ」
「だって面白いんだもんっはははっ」
「………」
小野龍は不機嫌そうな顔をしながら下を向いていた。
「………じゃあ俺そろそろ行くから。気をつけろよな」
そう言って立ち上がった。
「あ、うんっ。龍くん、本当にありがとう!」
立ち去る彼の背中にお礼を言うとこっちを振り返らずに右手をひらひらさせながら帰って行った。
「わ、私も帰らなきゃ………」
その背中に、助けてくれた時のこととか、セリフ、抱きしめてくれたことを思い出して少しドキッとしたことに気づかないふりをして、私も公園をあとにして家に帰った。