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あなたが消えない

第20章 永遠は消さない

「翔、私も同じだよ!逢いたかった…ずっとずっと…毎日毎日翔の事ばかり…もう頭がおかしくなってしまったんじゃないかってくらい…翔の存在を…あなたが消えなくて…ずっと苦しかった…」

「おまえの事を想って…自分で出した選択で、こんなつらい思いをするだなんて、思いもしなかった…俺の2回目の後悔だ…」

「…つらかったの!…でも一番つらいのは…あなたに逢えない事なんだって!…私は…もう…あなた無しじゃ…生きていけないんだって…分かっていた事なのに…」

私は泣きじゃくる。

「ごめんな…翼…でも俺も…どうしたらいいか分かんなくなってて…」

「分かってる…翔の気持ちも…分かってる…でも愛してるから…私の気持ちが…収まらなくて…死んでしまいたいと思うくらいだった…」

翔は手を引いて、アパートの前の電信柱に停めてある車の側へと、私を連れて行く。

「なぁ、明日休み?」

私は頷いた。

「旦那は転勤して一人なんだってな?」

「どうして、知ってるの?」

「こうやって、この時間になると、おまえはいつも101号室の前で泣いてる…そう、知り合いの知り合いに聞いた…それで俺はもう…自分の気持ちに嘘は付けないと…身勝手に逢いに来たんだよ…」

101号室の扉を、翔は見つめた。

私の行動、知ってたの。

それをちゃんと、伝えてくれたんだ。

「翔は?どうして今の時間に?」

「夜勤だって抜け出してきた…今夜は衝動的にだから特別かな…」

「聞いてもいい?」

どうしても聞きたい事。

これが最後じゃないよね?

「また逢える?」

「逢いに来るよ、何度だって翼に逢いに、ここに来るよ」

「うん…」

私は小さく頷いて、涙をポロリと溢した。

親指でその雫を拭いて、翔は言った。

「1年の穴埋めがしたい」

私は躊躇う事なく、深く頷いた。

それがどういう意味かは、もう分かっていたから。

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