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あなたが消えない

第20章 永遠は消さない

以前より翔は、穏やかな顔付きになっていた。

やっぱりもう父親だから?

少しだけ細身の身体が、ぷっくりしてる気がする。

やっぱり奥さんと一緒にいて幸せなんだね。

私一人、バカみたい。

翔だけを想い浮かべて、今まで生活をしてきて。

翔を愛してるって、想いだけしかなくて。

「どうしたの?元気ないね」

「翔、今幸せなんだろうな…って感じたの」

「…そんなふうに見える?」

「うん…」

どうして聞き返すの?

素直に言ってよ、幸せなんだって。

「翼は?」

「そんなふうに見える?…私は幸せだなんて思う訳なかった…」

ホテルのベッドで、懐かしい翔の腕枕で抱かれながら、私は答える。

「じゃあ、俺も同じだ。…おまえの幸せを考えたら、毎日俺は幸せだなんて思う訳もなかった…」

「子どもと奥さんの側に居て、よくそんな酷な事を言うよね…相変わらず最低…」

「あぁ、俺は最低だよ。最低ついでに言っとく。その生活をうまくやりこなすための、支えが側になくて、俺は本気で苦しかったんだ…」

「支え?」

翔は、私を見つめてキスをした。

「翼は俺の軸になってる。絶対にこの先も失いたくない…それくらい俺はおまえを必要としてる…その事に俺は気が付いてしまったんだよ…」

「そんなに想ってくれるなら、奥さんといっそ別れたらいいのに…」

そんな事、翔が出来る訳もない事を私は分かってるからこそ、あえて言ってやった。

「翼のイジワル」

「ごめん…だって本気であなたの事を愛してるんだもの…」

「分かってるけど嬉しい。俺もだよ…」

そう囁いて、私をギュッと力を込めて抱き締めた。




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