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紅蓮の月~ゆめや~

第14章 最終話 【薄花桜】 二

 三月(みつき)ばかり前、実家の父親がひそかに小文に逢いにきた。
―お前は思ったより、ずっとよくやっている。正直、やはりどんなことをしても、お前を家に引き止めておくべきだったと後悔しているよ、小文。お前の商売の才覚は抜きん出ている。なあ、もう良いだろう、ここらが潮時だ。治助もあの通り、先が長くない。お前は治助と別れて家に戻りなさい。お前はまだ十分に若い。今からでもやり直しはできるんだ。私は今でもお前に婿を取って店の身代を継いで欲しいと考えているんだ。
 父親は「ゆめや」の繁盛ぶりに、愕いた様子だった。もし小文が家に戻れば、慰謝料代わりとして治助にも十分な治療をさせ、その面倒もうちで見るとまで父は言った。

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