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紅蓮の月~ゆめや~

第14章 最終話 【薄花桜】 二

「いけねえ。俺の病気がうつっちまう」
 治助の声には哀しげな響きがあった。
 小文は顔を背けた治助の顔を両手で挟み、無理に自分の方に向かせた。
 額と額と触れあわせ、軽く唇に触れる。
 刹那、治助が小文を抱きしめた。
 やせ衰えた身体のどこにこれほどまでの強い力が残っていたのだろうかと思うほどの力だ。
 治助は小文を強い力で抱きしめると、その唇を貪るように吸った。治助の舌が小文の口中で自在に動く。小文もそれに自ら応えた。
 いかほどの刻(とき)が経ったろうか。
 治助がハッとしたように小文から身を離した。
「す、済まない」
 小文は微笑んで首を振った。
「―嬉しかった」

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