テキストサイズ

ライフ オブ ザ マウンテン

第1章 2

僕はテネイズと呼ばれる貧困街で産まれた。母は娼婦をしていて、父は無職でいつも酒を飲み家計を苦しませていたが、母の収入だけで何とか支えていた。今思うとそんな家庭で産まれ、何故、捨てられなかったのか不思議だった。施設や孤児院に入れる事もできたはずなのに。でも理由はある程度見当がつく。なにしろこの家族を何十年と見てきたから。要するに母は誰かを罰したいが為に、父は暴力を振るいたいが為に私を家族に迎えたのだろうと思う。実際にはそれ以上の仕打ちを受けたが、父や母はそれを非常に喜んでいたし、僕が一人っ子でもあったから、ますますエスカレートしていくばかりだった。ただ一つ良かったのは幼児の頃の記憶がないのが幸いだった事だろう。でなければどんな仕打ちを受けていたのか…記憶があるだけでも身震いする。
幼少に覚えている辛い体験はたくさんあった。母と父は二人だけの寝室で寝て、僕は別の寝室で一人で寝ていた。一緒に寝たいと言うと決まって母は体罰を行ったり罵声を浴びせた。「お前は出来損ないだから私達とは違うのよ。でもこの家の為に働いてもらうわ。あんたの存在理由なんてそんなもの」これが母の口癖だった。父にも同じ事を言ったが、彼は平手で私の頬を叩いた。本気ではなかったかもしれないが、どれだけ痛かったか、子供は大人の何倍も敏感だと聞くが、その通りだと思う。肉体的にもそうだが精神的にもずっと辛いものだと、その時分かったような気がした。そうして彼らは僕の話を聞き入れることはなかった。僕は一人でいるのが寂しく、枕を涙で濡らして寝ていたが、その姿を見て母は笑っていた。まるで自分の思い通りになる(または弄られ支配できる)小動物を見つけたかのように。初めておもらしをした時も、それは酷いものだ。父は憤慨し、ぬらしたシーツを顔に押し付け、僕の頭を数回叩いたし、母は外に追い出し次の日まで家の扉を開けなかった。どこにも行く所がなかったから家の前で一日中待っていたこともある。隣人や通りがかり
の人が私を見て怪訝そうな表情を浮かべていたのは今でも覚えている。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ