murder─殺戮編─
第2章 裁きの処刑場へようこそ
誰もが男へ視線を釘付けにする。
優雅な見た目。
金と銀の装飾に縁取られた仮面の下部、隠されていない薄い唇が吊り上がった。
「此処はお前達の処刑場。そして俺は処刑執行人だ。生き残れる可能性も、脱け出す可能性もゼロ。さぁ、遊ぼうか」
カツッと音を立てて男は立ち上がる。
逆立った、鮮やかな金の髪。
まるで不良貴族だなと、悠斗は眉を顰めた。
何よりも、イカれている。
処刑場?
処刑執行人?
何の事だと、口を開く前に周囲から罵声が飛ぶ。
「ふざけんなこの気違い野郎!」
「こんな事して唯で済むと思うなよ、オッサン!どうせ直ぐ警察にしょっぴかれるんだ!こっから出しやがれっ」
「頭イッてんじゃない?処刑って、何時の時代ですか~」
「てか家に帰りたい!お腹空いたー!!」
流石は若いだけあって、誰もが感情で動く。
男は腕を組んだまま。
その罵声に黙って耳を傾けていた。
一人が奮い立てば二人、三人と声を上げる者も増えていく。
悠斗は何となく便乗しそこね、漂う気迫に圧されて成り行きを見守る事しか出来ないでいる。
出せ、帰せ。
警察に通報してやる。
処刑オタク。
それともマニアか。
次々に飛ぶ喧騒。
だが次の瞬間、場内は怖い程に静まり返る。
「……ああ、そういや仲間を一人紹介すんの忘れてたぜ」