murder─殺戮編─
第2章 裁きの処刑場へようこそ
金髪の男が唐突に呟く。
は?と子供達が怪訝に口を閉ざすと、その中。
罵声を投げた一人の男子高生が突如痙攣し始めた。
尋常じゃない程の震え。
何、何?
おいどうした!
大丈夫か!
やだっ、怖いっ!
周りの声にもその男の子は反応しない。
ブルブルと激しく身を震わせ、白目を剥いた目尻から赤い血が流れ出す。
耳、鼻、口。
穴と言う穴から流れる血液。
呻きながらその男子高生は、けれど壊れた人形の様な足取りで動き始めた。
「いいっ……いだいっ!いだいぃ~!!だずげ、だず……だっ……………えう゛ぅ~っ!!?」
バシャッ
たった三歩。
足が地面に着いたと同時、断末魔と共に少年の体が弾け飛ぶ。
飛び散る血潮、肉片。
その中からゆっくりと現れる、血を纏った長身の男の姿。
少年の崩れた顔の半分が、悠斗の足元にビシャリと落ちた。
「……………ッ…!!」
漂う血と臓器の生々しい臭いが鼻腔を突く。
少年の中から現れた男は黙したまま。
自らのスーツに付着した肉の欠片や皮を無造作に払い落とし、仮面で隠された顔を上げる。
「………きっ」
「きゃああぁあああぁあーッ!!!」
「うわっ、わあぁああぁぁあ!!」
狂った様な叫びを上げて、室内は混乱の極みを迎えた。
蜘蛛の子を散らす様に逃げ回る群れ。
指や腕や骨の散らばる床を踏み荒し、その場に居る全ての子供が壁際まで避難する。
悠斗は唯、壁に手を着いたまま呆然としていた。
頭がこれは夢だと訴える。
だから早く逃げろ、目を覚ませと。
そう叫び、全神経が絶え間なく警報を鳴らしていた。