WONDERな世界
第7章 WONDER LAND -EPISODE #6-
SIDE/狼執事
お嬢様が目覚め、兎の傷を癒していく。
お嬢様の「癒し」は珍しい。
「楓もごめんなさい。手間を取らせて」
「気にしないでください」
俺はお嬢様に頭を下げる。
「話の続きは私がするわ」
「畏まりました」
お嬢様と兎は椅子に座り再び沈黙が
続くが沈黙を破るのはお嬢様。
「"完全"ヴァンパイアはヒトの生き血を
呑んで生きていくの。
私はヴァンパイアでも少しだけ
変わってるヴァンパイア。」
「ヴァンパイアは自己再生が出来るの。
でも…私は違う」
お嬢様は立ち上がり、椅子の背凭れを
力いっぱい壊す。
椅子の背凭れは無惨な姿になる。
お嬢様の手からは血が流れる。
俺はお嬢様の手を取り傷を消毒し
手当てをする。
「暫く経っても傷は癒えない。
自己再生が出来ない代わりに
癒しを授かった。ヴァンパイア一族は
お嬢様を特別な存在として
"姫"と名乗り始めたんだ」