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適当詩

第8章 8

「夜半にかけ雨はあがるでしょう」

久しぶりの雨に打たれて

去る日の仕事を思い出す

記憶はなくとも

身体は覚えているものだ



だから

あなたに再会したなら

鼓動が速まるのも

当然かもしれない



降り始めの雨音が

ぱたぱた



鼓膜に与えた振動が

高まる予感に

心を震わす



どしゃ降りで

ずぶ濡れになれば

走り出すしかないので

辿り着いた

雨宿りの軒下で

赤色の傘を畳む

あなたに似た彼女に

一時の同じ境遇を

運命と呼んで

心通うことを

願ったりして


いつの間にか

上がった夜空に

満月があって

縁をなぞって

円周率なぞ唱えてみても

私の心は堂々巡りで

永遠に答えは出せずに

謎は深まるばかり


やっと

兎を探し当て

あなたの気持ちが

少しわかった気が

するのだけれども

果たして

私の兎は

あなたが見ていた

兎だろうか


金色の淡い光だけが

佇んでいるから

今夜は




終わり。

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