テキストサイズ

タイバニ小説置き場

第2章 離さない、離れない(ルナティック×虎徹)

「寒いな…春は遠いか。」

三月に入ったというのに北風強い夕刻、仲間と別れ珍しく一人自宅に帰る虎徹。
相棒であるバーナビーは墓参りに行くため先に帰っている。

「俺も久しぶりに楓に電話してやるか。」

愛娘は可愛い、それでも女の子というのはませていて子供扱いするなと反抗してくる。
それでも親である自分には愛しく愛らしい存在でもある。

吹き付ける風に身体を小さく震わせて愛娘への思いに心がそわつきながら足早に歩いていく。

「あれは…。」

虎徹は眼を見開いた。

向かいのビルに立つNext。

それは正義の名の元に蒼き焔を纏い焔の矢で咎人に裁きを下す裁き人。

「ルナティック…ちょっと待て、ちょっと待てよ!」

ルナティックの姿を確認し虎徹は慌てて帽子を押さえながら辺りを見回した。

彼が現れるのはだいたい決まって側に犯罪者がいる。

ところがそんな連絡もアニエスからもなく、辺りは静かそのもの。

「あいつなんでこんなところに…うわっ!」

一瞬ルナティックの姿が消えたかと思うと虎徹の身体が何者かに抱き上げられていた。

「鏑木虎徹、貴様に話がある。」
「ちょっと待て!ちょっと待てーっ!」

突然の事に混乱して暴れ出したがかたや生身、逃げようにも逃げれる状況でもない。

ルナティックの腕が虎徹の身体を抱く力が籠もる。

「おいルナティック、俺と話なんかしても意味ないぞ!俺はお前と話なんかしたくないし!」
「黙ってろ。」

真意が見えなかったが下手に逆らえば地面に叩き落とされる可能性もあるし逃げて追い回されても逃げ切る自信がない。


仕方なくおとなしくされるがままになるしかない。

次々とビルを身軽に飛び越えて降りたのは雑居ビルの屋上。

「お姫様ご機嫌いかが?」
「誰がお姫様だと!お前が勝手に誘拐しただけだろ!しかもお前犯罪者を許さないと言いながらお前がやってる事は十分犯罪だろ!この誘拐魔!」
「お喋りが過ぎるお姫様だ、デートはお気に召しませんでしたか?」

激昂(げっこう)という言葉が頭をよぎる。

「子持ちやもめで三十後半のおじさん捕まえといて何がお姫様だ!」
「ではバーナビー・ブルックスJr.に抱きかかえられるほうが良かったかな?鏑木虎徹?」
「そ、それは…だな。」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ