ヤクザの孫でも純粋です。
第4章 #3
「結女。そろそろ学校が始まるんやで。
結女とおんなじ高校やったら
ええんやけどなぁ?」
「そうだね。」
「家、こっち?あの坂の近く?」
―あの坂。
というと桜並木の坂だろう。
私はうんと言い放つ。
「ほんなら坂まで歩くさかい、
家の前に来たら教えてな」
そう言うと泉はテクテクと歩く。
その間もずっとお互い口を開かず
只歩いている。
「―ッ泉。ここ」
危うく家の前を通り過ぎる所だった。
私は泉の手を引っ張り泉は足を止める。
「ここ?ほんまに坂の近くやな…。」
桜並木の坂道からは歩いて15分程度の
距離だから本当に近い。
初々しい恋人同士みたいに別れを
惜しみ私と泉はまた沈黙。
「結女ッ!」
「は、はいッ!」
突然、名前を呼ばれたから吃驚して
敬語になる私。
「えっと…その、な?」
「うん?」
「あー…。あんな?」
「なに?」
「―…ッアドレス、教えてくれへんか?」