ヤクザの孫でも純粋です。
第5章 #4
「ハッ…ッ」
急な坂道を頑張って自転車で乗り越え
桜並木が俺を迎える。
俺この桜は嫌いや。
俺のセットした髪に容赦なくひっついて
嫌いや。
でも今は違うねん。
―――――――――――
「―…ッアドレス、教えてくれへんか?」
俺、今絶対顔紅いで…。
カッコ悪。
でも、一目惚れしたクセっ毛のセミロングの
女に連絡先を聞くためや。
結女は大きな瞳をまた大きく開いて、
驚いてる。
でも結女は、直ぐに笑顔を見せて
「うん」
て頷いてくれた。
「私の教えておくから、
泉が家に着いたら連絡…して?」
そう言うと結女はデニムのジャッケットから
薄いピンク色の携帯を出してアドレスと
電話番号を俺に教える。
「じゃあ、待ってるから。
またね?泉。」
結女は俺に手を振り家の中へと
走る。
結女が家の中に入って姿が見えなくなる
まで結女の家の前で突っ立っている俺。