ヤクザの孫でも純粋です。
第5章 #4
我に帰って自転車を勢い良く
漕ぎ始めて急な坂道を自転車で登る。
桜並木が俺を迎え、花弁が
ちらちらと舞う中、俺は自転車で
その中を走り抜ける。
暫く走っていると目の前に現れたのは
昔ながらの殿様が住んでいるような
家。
その家の中に入って自転車を降りて、
玄関の前に止める。
玄関を開けて、「ただいま」の一言も
言わずに部屋へと一直線に向かう。
部屋に入り、暫く黙り込む。
「よっしゃああああああッ!!!!!」
両手を高く上げ喜んで叫んでしまう。
初めて、女に連絡先を交換して
ハイテンションな俺。
―ガラッ
「うっさいわ!!ボケ茄子ッ!!」
―バシッ
不意をつかれ何かで頭を叩かれた。
振り返って見ると、眼鏡を掛けた
俺と同じくらいある長身でペットボトルを
持って眉間に皺を寄せる、
「渚ッ!なんやねん?人がハイテンションで
機嫌よおしとるのに…。」
渚(ナギサ)。朝比奈 渚(アサヒナ ナギサ)は
俺の兄ちゃん。
兄ちゃんでも、腹違いの兄ちゃんやから
顔も性格も似てない。