腕の中で
第2章 2
気のせいだよな。
夏はそう自分に言い聞かせて
気にしなかった。
この日の3時間目は国語。
鉄平がきっと当ててくる。
そう思いながら待っていた。
‐キーンコーンカーンコーン‐
「はい、終わります。」
当ててこなかった。
昨日までは絶対当ててきたのに。
夏は呆然とした。
その日の授業は全然頭に入らなかった。
考えるのは鉄平の事ばかり。
STが終わり、学校を出た。
今日はとうとう一度も鉄平と話さなかった。
コンクリートを見ながら家を目指す。
「あ、アレ……?」
コンクリートが徐々に歪んでいく。
涙が溢れた。
自分は何もした覚えが無いのだ。
その日の夜、毎日期待していた電話も
掛かって来なかった。
「ふぇ…なんでぇぇ…!」
夏は部屋で声を上げて泣いた。
期待してはいけなかった。
鉄平は私を嫌ったんだ。