とある隠れ変態の物語
第6章 エンジェル羽恋と初デート
「メイドカフェなら柚子さんとかも居るでしょ?何も羽恋じゃなくても」
柚子さんは、日本を代表する五大財閥の一つの一人娘。ばりばりのお嬢様だけど、親のすねをかじるみたいな事はしたくないって言ってて自分で稼いでる。もちろん、柚子の一人娘ってばれないように変装して。
「いーやいや。今のピンキーの需要
は僕みたいなタイプなんだよ。美優ちゃんは綺麗系、系統が違うんだよ」
あいや、残念だね。
そう言いながらにこにこするその表情は何だか意味ありげ。
油断ならない。
「だから羽恋が系統的に欲しいと」
「はは、よく分かってるね」
「だめだよそんなの。そういう水商売はイヤイヤやっても上手くいかないだろうし」
「えー、羽恋ちゃんは嫌なんて言ってないよ」
「オレが嫌なんだよ」
秋之さんが経営してる訳だから、信用してないわけじゃない。オレも一時期何だかんだ言いながらホストで働いてて。凄くいい雰囲気だったって知ってる。
でも。
「いいの?羽恋ちゃんは女装癖があって、真田くんと付き合ってて裏路地でえっちしてたってばらしちゃうよ?」
「つ、つ、え、えっ……!?」
「付き合ってないよ。さっきは誤魔化すために言っただけ。とにかく、だめなものはだめ。オレのことはなんて言ってもいいけど、羽恋のことはだめ」
付き合えるなら付き合いたいけど。ふふ。こんなこと言えないや。
「だ、だめだ!オレのことはなんて言ってもいいけど、尚輝のことはだめだ!」
「え、ちょ羽恋?」
「尚輝に迷惑かけちゃだめだ!オレ、メイドカフェでも何でも働くから」
「や、だめだよだめ。そんなのオレが許しません」
「いいったらいいんだ!メイド服でもなんでも着てやる」
「だめだよ!いや、メイド服はいいけどメイドカフェはだめだよオレが嫌なの」
「え、メイド服とメイドカフェにどんな差があるんだ!?何で働いちゃだめなんだ!?」
言いあいの内容がだんだん良く分からない方向に向かっていく。
次第に呆れた表情になっていく伊沢くんに気づいていてはっとするけどもう遅い。
「あーはいはい分かった分かった。僕は退散するよ。付き合ってない?嘘でしょ?どこのバカップルのケンカさ」
じゃあね、ばいばい。
このことは後々話すことにするね。
ひらひら手を振って、彼は今度こそ帰っていった。