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とある隠れ変態の物語

第6章 エンジェル羽恋と初デート





まだ梅雨だからなのか、少ししめったレンガに とん、とよりかかる。



「分かったってば、そんなに怒らないで」


じゃあね、真田くん。ばいばい。


最後にそれだけ言い残して去っていく背中を見据える。
ようやく見えなくなってほっとして、羽恋を離そうとした時。



「そういえば、恋人さんが気になった理由話してなかったよね」


「っ!?……不意打ちやめてくれるかな?心臓に悪いんだけど」



再びの悪夢。
本当に、この子はタチが悪い。

気になった理由。
それは人手不足にあるらしい。

伊沢くんが働いてるのってメイドカフェなんだよ。もちろん、女装して女性として。周りのメイドさんでその事を知ってるのはごくわずか。
そのメイドカフェは『ピンキー 』って言って、オーナーさんの秋之さんとオレは仲がいい。
オレが借りてるマンションって、実は秋之さんの所有物だったりする。
その秋之さんを伝ってオレの事を知った井沢くんは初対面のオレをスカウトした。
系列のホストクラブで働かないかって。それでまぁごたごたがあって、彼の事はあんまり好きじゃないんだけど。


……話を戻そう。
そのピンキーの人手が不足してるらしくて、困り果ててた時、羽恋を見つけたらしい。



「こんなに可愛いんだよ。もうスカウトするしかないよね。羽恋ちゃんをさ?」



やっぱりばれてたらしい。


「大丈夫、あいつにはばれてないから。でも羽恋ちゃんに女装の趣味があるなんて知ったら、みーんな、喜ぶだろうね?はは」



ばらすつもりだ
それを理由に羽恋を引きずり込むつもりらしい。



「違うよ、羽恋じゃない。オレがしてって言った。オレのせいだよ」



そうはさせない。
羽恋はメディアにも、メイドカフェにもあげるつもりは無いんだよ。

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