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サンタの足音

第5章 真相編 二

あるクリスマスイヴの夜、かき入れ時の例のホテルでは、男の従業員がサンタに扮装すると、お節介なことにひと部屋ずつプレゼントを配って回った。

人目を忍ぶ者もいる店柄を考えれば、プレゼントはフロントで渡すなり部屋に置いておくなりする方が無難である。しかし、経営者は「クリスマスくらい」と大胆なイベントにしたかったのだろう。それが三年目に行われたイヴの夜…

サンタに扮した従業員は、ハイテンションで客と接するように命じられていた。そしてある部屋のドアを陽気に叩くと、

「メリークリスマス!」

踊るような声音で中に呼び掛けた。すると中からは、体格の良い厳めしい男性が荒々しく出てきた。一目見れば堅気でないことは察せられた。

「きさま…」

「あ、あの、プレゼント…」

サンタが申し訳を開く余地も与えず、男は殴り掛かった。

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