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鳴り響く踏み切りの向こうの世界

第1章 一束の人生

俺はただゆっくり流れていく列車を見つめていた。
どうして…彼女は踏み切りで飛び込んだのか?
上手く言えないが…少しタイミングが取りづらい気がした。勿論事故の可能性もある。

しかし…大の大人が(しかも女)が真っ昼間群衆の中で遮断機を潜るのはかなり考えづらい。
第一そんなに急ぐのなら地下通路もある。

最後の一両が通り過ぎた。

まるで幕を開けるように。いや…物事の裏側を暴くかのように…。
もうつまらないコントじゃない。
そうもっとつまらない安い妄想の世界の幕開けさ。

鳴り響く踏み切りの向こうの世界。

若い男が携帯電話片手に笑っていた。

目は笑ってはいない。

口元だけが笑っていた。



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