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無題

第2章 始まり(後編)

雅樹の部屋はワンルームで玄関を開けると全てを見渡せるほどの広さで、玄関から直ぐにトイレ、その横がバスルーム。

向かいがキッチンになっていて、キレイに片付いてはいるけど使用感は感じられた。

一応リビングとの仕切り戸はついているようだが開け放たれていた。

「そんなちらかっては無いけど狭いし、人来ないから面白い物も特にないから」

「…了解」

「入ってて。何か飲み物用意する」

未知の領域に踏み込むように足音をたてずにそろそろとリビングに踏み込んだ。

テレビとテーブルとベッドがまず目に入って色合いはモノクロで統一されていた。

微かに香る甘めの匂いは雅樹自身からするものと同じような気がする。

殆んど生活感は無いけどお洒落な部屋だなぁと思った。

どこに座っていいか迷っている内に準備ができたらしい雅樹から背中を小突かれた。

「どこでもいいからとりあえず中入ってくれないとそこにいられたら邪魔」

「ごめん」

郁也の横をすり抜けるようにして入ってきた雅樹の背中をぼんやりと眺めていると、足元を指さされたのでとりあえずそこに座ることにした。

友達の家なんて行き慣れてるし、初対面の人の家でもくつろげる郁也だが何となく雅樹の部屋は緊張した。

部屋と言うよりは雅樹と二人の現状に緊張しているような気もする。

多分あんな事があったからだろうけど…と悶々と考えながら正座の状態でうつむいている郁也を雅樹はしばらく眺めていたがやがてフッと小さく笑った。

郁也が緩慢に顔を上げると雅樹が机に半身をあずけるようなだらりとした姿勢で覗きこむように郁也を見つめていた。

表情は何となく柔くて少しドキッとした。

やっぱり整ってるよなぁ等と考えながら雅樹を見つめていると口が開いた。

「お前なんか見た目の割りに意外と可愛いなぁ」

「は?」

バカにされたのか誉められたのかわからくて変な顔をしてしまった郁也に雅樹は可笑しそうに微笑むと、あっという間に距離をつめて郁也に朝と同じようなキスをした。

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