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無題

第3章 中盤

雅樹が冷蔵庫から食材を取りだし手際よく料理する姿を横目で見ながら郁也は先程の事を考えていた。

多分…キスしようとした気がする。

さっき避けてしまったのは雅樹が嫌だったわけでは無くて、ただ純粋に驚いて避けてしまった。

あまりにも雅樹の言動が不思議過ぎて郁也はちょっとした恐怖心すら感じられた。

雅樹からのキスを受ける度に甘くなってきている気がする。

いつも完璧に思える仮面を被っている雅樹がキスの度に仮面を剥がして…

甘えてきた…?雅樹が?俺に?

あり得ないだろうと郁也は否定した。

つい昨日郁也は雅樹を強姦しているのだ。

郁也は酒に酔って記憶が無いが、とてつもない鬼畜の所業だったに違いないと断言できる程の傷痕、雅樹本人も目を覚ました郁也に恐怖し震えていた。

だから、全ては勘違いで自分の都合のいいように解釈しているだけで――…

「また考え事か?」

「…あ」

どうやらずっと考えていたみたいで気付けは部屋には美味しそうな匂いが混ざりこんでいた。

雅樹はフッと柔らかく笑うと持っていた皿を机に置いた。

ぶわりと匂いが郁也の脳にまで届いて先程まで考えていたことは新しい情報で端に追いやられた。

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